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「努力の結晶が…せっかく成功したのに……」
その場にへたり込んで、惨めな姿の球体を撫でまわす。
ビスは外れ半分が床に埋まり、胴を支える太い足は周囲に転がっている。
操縦席は辛うじて原型を止めているものの、唯一の扉は壁ぎわで動かない。
故障時特有の臭いもまた、物悲しい。
ブツブツと呪咀のように独り言をもらすその様は、不気味だった。
誰も近寄らない。いや、近寄れないのだ。
女はふらふら立ち上がり、周囲に散った残骸を拾い集めだした。
ひとつ拾うたびに何事か呟く。
蹴り飛ばし壁にヒビを入れた扉らしきものも、引きずりながら球体のもとへ。
生気の無い目で本体を起こしにかかったとき、ふと床に目がいった。
さっきもめた時に落としたのだろうか。
少し躊躇ってからそれを手に取り、女のもとに歩を進めた。
「なぁ、これあんたのだろ?」
「………えぇ?」
「落ちてたぜ。ホラ」
そう言って焼き鏝に似たものを手渡した。
ガイが音機関いじりをしていたときに見たことがある。
へんてこなコードはなかったけれど。
「……ありがとう。えーと、」
「ルーク。ルーク・フォン・ファブレだ」
よろしくな。
手を差し出すと女は、リクと名乗った。
作業用と思わしきゴーグルをつけたままで、服は油で汚い。
髪はボサボサで手は黒に染まっていた。
けれど、笑った顔は明るかった。
「なあ、もしかしてソレ直す気か?」
「うん…壊れたら修理してあげなきゃ…」
「此処で?」
「うん…此処で……、え?」
「謁見の間では無理だろ」
そこまで言って、リクは周囲を見回した。
此処は自分のサンクチュアリ、もとい、作業場ではない。
理解して、ぎこちなくルークをみた。
その後ろに蜂蜜色の長髪美人。
………般若かと思ったけれど。
「やぁっと状況が理解できたようですねぇ?不法入国さん」
「う……すみません」
「まさか、警護兵に怪我を負わせる程の力があるとは思いませんでしたが」
「え?怪我っ!?」
「もう治療済みです。全治2、3週間というところでしょうか」
全治2、3週間。その言葉にさっと青ざめた。
大怪我を負わせた。それはいけないことだ。
いくらウィングバッグに手が加えられそうだったとしても。
完全に固まってしまった不審者、リクの眼前で手を振るがそれは無意味だった。
面倒な女だと思い、わざとらしく深いため息を吐く。
「あんまりバカ面下げていると、蹴り飛ばしますよ?」
「ご、ごめんなさい!」
「おいジェイド!」
薄汚れた顔の前にニーハイブーツの裏を見せる。
脅すように軽く振れば弾けたように立ち上がった。
「ともかく、その譜業はこちらで預かります。解体したりしませんのでご心配なく。あなたは取り調べを受けて頂きます」
任意ではありませんよ。
飛びっきりの笑顔で言い渡された死刑宣告にも似たそれは、この後の苦悩の始まりだった。
「努力の結晶が…せっかく成功したのに……」
その場にへたり込んで、惨めな姿の球体を撫でまわす。
ビスは外れ半分が床に埋まり、胴を支える太い足は周囲に転がっている。
操縦席は辛うじて原型を止めているものの、唯一の扉は壁ぎわで動かない。
故障時特有の臭いもまた、物悲しい。
ブツブツと呪咀のように独り言をもらすその様は、不気味だった。
誰も近寄らない。いや、近寄れないのだ。
女はふらふら立ち上がり、周囲に散った残骸を拾い集めだした。
ひとつ拾うたびに何事か呟く。
蹴り飛ばし壁にヒビを入れた扉らしきものも、引きずりながら球体のもとへ。
生気の無い目で本体を起こしにかかったとき、ふと床に目がいった。
さっきもめた時に落としたのだろうか。
少し躊躇ってからそれを手に取り、女のもとに歩を進めた。
「なぁ、これあんたのだろ?」
「………えぇ?」
「落ちてたぜ。ホラ」
そう言って焼き鏝に似たものを手渡した。
ガイが音機関いじりをしていたときに見たことがある。
へんてこなコードはなかったけれど。
「……ありがとう。えーと、」
「ルーク。ルーク・フォン・ファブレだ」
よろしくな。
手を差し出すと女は、リクと名乗った。
作業用と思わしきゴーグルをつけたままで、服は油で汚い。
髪はボサボサで手は黒に染まっていた。
けれど、笑った顔は明るかった。
「なあ、もしかしてソレ直す気か?」
「うん…壊れたら修理してあげなきゃ…」
「此処で?」
「うん…此処で……、え?」
「謁見の間では無理だろ」
そこまで言って、リクは周囲を見回した。
此処は自分のサンクチュアリ、もとい、作業場ではない。
理解して、ぎこちなくルークをみた。
その後ろに蜂蜜色の長髪美人。
………般若かと思ったけれど。
「やぁっと状況が理解できたようですねぇ?不法入国さん」
「う……すみません」
「まさか、警護兵に怪我を負わせる程の力があるとは思いませんでしたが」
「え?怪我っ!?」
「もう治療済みです。全治2、3週間というところでしょうか」
全治2、3週間。その言葉にさっと青ざめた。
大怪我を負わせた。それはいけないことだ。
いくらウィングバッグに手が加えられそうだったとしても。
完全に固まってしまった不審者、リクの眼前で手を振るがそれは無意味だった。
面倒な女だと思い、わざとらしく深いため息を吐く。
「あんまりバカ面下げていると、蹴り飛ばしますよ?」
「ご、ごめんなさい!」
「おいジェイド!」
薄汚れた顔の前にニーハイブーツの裏を見せる。
脅すように軽く振れば弾けたように立ち上がった。
「ともかく、その譜業はこちらで預かります。解体したりしませんのでご心配なく。あなたは取り調べを受けて頂きます」
任意ではありませんよ。
飛びっきりの笑顔で言い渡された死刑宣告にも似たそれは、この後の苦悩の始まりだった。
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